フィレンツェ編 06-10 of オイラ陽気なイタロ・ジャッポネーゼ

1-6 あつい、アツイ、暑い!!  

01-06.jpg今日も額から汗が吹き出ているのがわかる。ただいま気温は40度、日本では考えられない温度だ。
日なたで肌が直接日光に触れると、チリチリと灼けていくのがわかるような気がするほど。だからみんな縫うように日陰を選んで歩いている。

気温は40度を超えても、湿度が低いせいで日陰に入って風に当たるとなるほど涼しく感じる。
おかしいのが広場などでは日陰にごちゃっと人がかたまって座っているから、さながら石の下の虫のよう。振動でも感じればわらわらと散っていくんじゃないかと思う。

こんな日は、ジェラテリア(ジェラート専門店が喫茶店の感覚でたくさんある)も大変な混みようだ。
女性はダイエットを気にしているから、男性の方がより多く食べているんじゃないだろうか。男だけや一人で行っても全然へんじゃない。

イタリア人男性に言ってみた。

「日本では男だけでジェラートを食べたりするのは、ちょっと恥ずかしいかもしれないな」

そうしたらすかさず、こんな答えが…

「そんな国には僕は絶対行きたくないよ!」

(15/07/'98)

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1-7 塔の街、サン・ジミニャーノ  

01-07.jpgRocca(ロッカ/城塞)より中世の頃のまま、時が止まったような情緒あふれる街並みと、14もの塔が並ぶ、San Gimignano(サン・ジミニャーノ)。街の貴族たちの富と権力の虚栄のシンボルとして、最盛期には70を超える塔が立っていた。

車で向かうと連なる山並みの間に、無造作にろうそくでも立てたかのような、しかし幻想的なシルエットが浮かび上がった。周りのひまわり畑の黄色い絨毯がまぶしいくらいに目に飛び込んでくる。

車を降りて、両側にみやげ物屋を始め、銀細工、銅版画、特産のイノシシ肉・白ワインなどの商店が並ぶサン・ジョバンニ通りを抜け、ポポロ宮の塔Torre Grossa(トッレ・グロッサ:大きな塔)に上ると、この街全体を見渡すことができる。
レンガ色の屋根と石積みの壁、石畳、その向こうに広がる田園地帯を眺めていると、「自由に飛び回れたら・・・」と思えてくる。

窓から行き交う人々を眺めているおじいちゃんが、「絵になるな」と思ってカメラを向けると気がついて引っ込んでしまった。
「まったく、日本人は・・・。」とか思ったんだろうけど、アメリカーノだって相当なもんだよ。

(18/07/'98)

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1-8 「ROLEX !」  

01-08.jpg熱狂的なサッカーファンのアルゼンチン人外国語を勉強するときだれでも「L」と「R」の発音の違いに苦労したことはあるだろう。
ボクも例外にもれず、これに悩まされている。
それを知っているベローニカが面白がってこういってくる。
「HIROSHI、私のあとにまねして言うのよ。ROLEX !」

これが、意識してしまうと巻き舌も極端になってなかなかうまく言えない。
だが、ココで手間取るわけにもいかない。こんなに面白いイベントには、どんどんみんなが参加してきて、自分勝手に好きな言葉を言わせようとしてくるからだ。

こんな事をくりかえすうちに、今度は何でもかんでも巻き舌になって、ある時、自分が変なことを言ってしまっているのに気がついた。
「Molto caldo(モルト・カルド:とても暑い)」と言うときに、モルトが巻き舌になってしまい、「Morto(死)」になってしまっていたのだ。死にそうに暑いってことでいいじゃないか、と思ったけど、文法的にはすごくヘン。

ひととおりボクの練習が終わったところで、今度は日本語講座が始まる。
「アリガト、ゴザマス」
「コンニチワ」
「ヨロシクー」
口々に知っている日本語を言って満足すると、今度は
「~は日本語でなんて言うの?」

こんな時、いい年をしてみんなが聞いてすぐ覚える単語は「うんち」「おしっこ」・・・。
もうちっとましなことは聞けんのかい!

それでも、日本語の人称活用を覚えたベローニカは、学校で日本人に出会うといつも言っているらしい。
「ワタシハ・ベロニカサン。ヨロシク、ヨロシク。」

(23/07/'98)

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1-9 最初のアリベデルチ  

01-09.jpgテラコッタ工房の庭でいまだにわけのわからないまま、早くも最初のお別れの日が来た。
と言うのも私立の語学学校は1ヶ月単位で進んでいくのだが、ヨーロッパ圏から来ている人たちはヴァカンスを利用して1ヶ月だけ来ている人が多く、せっかく仲良くなってきたところで帰ってしまう人が多いのだ。わかっていたことだったけど、やっぱりちょっと寂しくなる。

学校でも授業の後にお菓子などで簡単にアリベデルチ・フェスタ(サヨナラ・パーティー)が催された。
そして、その時ボクはとうとう衝撃の初体験をする事になった。

彼女の名前はニッキ。実家はバハマで今はイギリスの学校に通っている。お父さんが銀装飾の店をやっているからキラキラとたくさんの指輪やネックレスをしているけど、それがまたカッコよくきまっているとっても元気のいい17歳の女の子だ。

「チャオ、HIROSHI。サルーテ(元気でね)!」
そう言って、ほっぺたを右、左とくっつけて「チュッ、チュッ」と。
そう、ご挨拶のバーチャ(キッス)。
出会ったときにも、お別れの時にもやるこれが、いままでボクにはちょっと恥ずかしかった。

いつかはするべき時がくるだろうと思っていたけど、ちょっと突然だったので少し赤面してしまった。
あっ、もちろんニッキがカワイイ娘だったからだよ。

(31/07/'98)

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1-10 ビリエット  

01-10.jpgさすがフィレンツェ、つり革が本革こちらに来てから、いろんな習慣の違いに驚かされっぱなしだけど、何かはじめての行動をとる時に、必ずそのやり方にとまどうことになる。

フィレンツェはちょっとがんばれは歩きだけでドコでも行けてしまう小さな街だ。
だからローマやミラノのようにメトロ(地下鉄)は無い。
その代わりに走り回っているのがバス。駅前では目的のバス停を探すのに苦労するほど複雑に走っている。

バスに乗るときにはあらかじめタバッキ(タバコ屋)などでビリエット(キップ)を買っておかなければならない。そのビリエットをバスの中にある機械で自分で日時を刻印するシステムだ。フィレンツェではその刻印の時間から60分間、何度でも乗り換えをすることが出来る。その刻印が重要で、していないのが見つかると5万リラの罰金を払わされる。それでも刻印をついつい忘れちゃう人がよくいるのだ。

検札は突然、抜き打ちで行われる。通常のバスには前後3カ所の昇降口があるが、3人の職員がそれぞれ乗客のふりをして乗ってきて、バスが発車したと同時に胸にネームカードを装着して前後からはさみうちでやってくる。

これは、ボクの目の前の座席で展開されたおばちゃんのスペクタクル。

「シニョーラ、ビリエットを見せてください。」
おずおずと刻印のないビリエットを差し出すおばちゃん。
「シニョーラ、これは違反になります。身分証明書を見せてください。」
ここで、おばちゃんは大女優に変身する。
「おおぉ、なんてこと!私はいまヴェネチアから帰ってきてとっても疲れているの!!
だからついつい刻印するのを忘れちゃったのよぉ!!!」
「違反は違反ですからね、ついつい忘れちゃってもダメなんですよ。」
「ほら見てちょうだい、今降りたばっかりの電車のキップよぉ。時間を見たらわかるじゃない。こんなに長い時間かかっていたら、あなただって疲れるでしょぉ。」

延々10分、大女優の家の近くのバス停まで、すべての乗客がこの終幕を見守った。
この出来事があってからわかった。あんな大女優でも勝てないんだから、ボクみたいな言葉もままならないエキストラレベルでは、ついつい刻印を忘れてみることは出来ないって。

(10/08/'98)

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