ホントは朝7時半発という、遠足として集合するには早い時間の出発のハズだった。
ところがいつまでたっても出発しない。やっぱりこういうときでも遅れるやつがいるから待つ余裕をもった集合時間だったのか「ちぇっ」とか思っていたら、なんと引率するはずの先生が来ていない!!
なんてこったい!
「みんなちゃんとそろったわね」
思いっきり照れ隠しにそういって、とっくにバスは出発しているのに、いまさら焦って点呼を取っているのはかわいくて笑ってしまうけど。
ミラノから片道3時間ちょっとの強行日帰りジータ(遠足)「ヴェネツィア・カーニバル編」はこうして幕をあけた。
バスを降りてチェントロに近づくと、いるいる!仮装して歩いている人たちが!
2人から数人で連れ立っている人たちは、何らかのイメージに沿っていたり、ペアになっていたり、特にファミリーや夫婦で仮装しているのはとてもほほえましい。
ここでは主に中世の頃の衣装が多く、通りや広場にたくさんの王様や貴族たちがポーズをつくって観光客のカメラにおさまっている。マスケラ(仮面)にもいろいろなものがあって、顔を全部覆うタイプのモノを付けていると、異世界から迷い込んできているような雰囲気を持っている。
メイクでカンタンに仮装仮装をしてきていない観光客でもカンタンに体験できる方法がある。
もちろん貸し衣装屋もあるらしいから本格的な仮装だってできるけど、路上でサッと描いてくれるメイク屋さんがにぎわっている。だいたいは目のまわりに模様を描いて、ちょっとした仮面風になっているのが多い。
子供達はというと、今映画も公開されて人気なのか「怪傑ゾロ」とか、「101匹ワンちゃん」のきぐるみとか、「ミニーマウス」なんかが流行りで、テレビや漫画のキャラクターが中心のようだ。
おしゃぶりをくわえたヒーローなんてのもカワイイものだが、先に挙げた仮装では例外なく皆ちゃんとヒゲを描いているのがおかしい。
でも、本当に笑ってしまった仮装がふたつ!
ひとつは、「ハチと花」のペア。衣装はともかくハチの方がずーっと
「ジジジジ、ジジジジ、・・・・」
と言いながら移動しているのだ。ちょっと小さな声で。
ごくろうさま・・・。
そしてスペシャルは「バナナとゴリラ」。
とにかくこのバナナの姿は見ただけでおかしい。ちょっとむいてあって、とぼけていて。
タダでさえ注目をあびていたところへ、突然バナナ内部から携帯の鳴る音が!
あわてて手と顔を引っ込めて(結構もたついて)電話に出る姿は、周囲の爆笑をかってしまったのでした。
あんなに笑われてたら、電話は聞こえなかっただろうな。
サン・マルコ広場でのスペッターコロ(おしばい)は、前のヤツが背が高くてジャマで見えなくて、ちょっと横にそれて道がひらけたと思ったら、前の前のヤツがアフロで見えないんだよ!だったけど(こういうときにカーニバルの帽子やカツラをかぶったまま見るのはやめてくれー!)、あんまりにも人が多すぎてヴェネツィアらしいものも食べられなかったけど、それでもとってもとってもカーニバル満喫の旅になった。
(13/02/'99 ヴェネツィアにて)
コモ湖畔「!?」
ちいさなことから大きなことまで、イタリアでは信じられない事がそこらじゅうにころがっている。
飲食店やスーパーなどの店の中に犬がいる。糞の後始末はしない。テレビは時間通りに放送されない。道を聞かれて知らなくても自信満々適当に答える。同じ事を聞いてもとにかく人によっていうことも対応も違う。
あげていったらきりがないけど、最初は言葉がわからなくて気が付かなかったこともだんだん気になるようになってきた。
最近いちばん気になるのがマクドナルドでのいろいろ。ミラノにはそこら中にマクドナルドがあって、座ってカフェを飲んでも席代がかからないからちょっとした時間つぶしによく利用しているのだが、やっぱり犬を連れて入っている人はいるし(これはイタリア人以外は皆信じられないと言っている)、とにかく待つ時間が長い。というか、ながい行列が出来たってぜんぜんおかまいなしなのだ!客がいようがいまいが足下まで掃除はするし、身近な友人に(日本の)マクドナルドでのバイトのいろいろを聞いたことがあるボクとしては、本当に同じ系列なのかと疑ってしまう程だ。
こんな調子で、結構働き者のミラネーゼにしても、その仕事の効率はちょっと疑うモノがある。
まあ、南の方と比べたらかなり良くやっている方だと思うけれど・・・。
(26/02/'99)
コモ湖畔「オレの(ワタシの)名前を日本語でかいてよ」
これは友達として出会ってたいてい言われること。
ボクはだいたいカタカナで書いてあげるようにしているが、時として漢字で書いてくれと言ってくることもある。
もう、そうなったら当て字でうまくはめ込むしかないけれど、それもなかなか難しい。
だって、まさに夜露死苦の世界なんだもんなぁ。
夏の頃にはタトゥーを入れてくれと言われてビックリしたが、それは日焼けをして後を残すタイプのものだった。たぶん、スパイス・ガールズのMel Cが右肩に入れてる「女力」ってタトゥーもとてもかっこよく見えるんだと思うが、あれもガールズ・パワーと入れてくれとでも言ったんだろう。
ときどき日本ブームなるものも起こるようで、料理を始め、生活スタイルやさまざまなものに興味のある人も多い。
だから、フェスタの時には寿司を作って欲しいと言われるし(ミラノなら材料がものすごく高いことを除けば作ることは可能)、ボクが持っている伊和辞典を面白がってながめたり、縦書きで右から読む書式やひらがな・カタカナ・漢字のまじった文章を不思議そうに見ている。
もっとも、今のボクの会話のレベルでは同じ学校の連中や、日本に興味のある人しか相手にしてくれないのも本当で、なかなか先の道のりは長いのである。
せっかくイタリアに住んでるんだから、イタリア人の友達ももっとつくらないとね。
(12/03/'99)
子供達が行列するほど天気のいい日に特別なにもすることがないとき、ふらふらと歩いてみるのが好きな場所がある。
Galleria Vittorio Emanuele II(ガッレリア)からドゥオモ広場、Corso Vittorio Emanuele(ヴィットリオ・エマヌエレ大通り)を抜けて、突き当たりの San Babila(サン・バビラ)あたりまで。
ツーリストが多いという意味では落ち着かないのもホントだけど。
ドゥオモ広場のサクラも花を咲かせ始めたし、それ以外にもいろいろな花が咲いて春の訪れを感じさせる。
スカラ座までアーケードで通じているガッレリアは、天井付近の絵画や歩道のモザイクなどがすばらしく、カフェの他に専門書をそろえる本屋もいくつかあって、アートや建築のモノを見てまわるとなかなか面白いものを置いているところもある。
最近オープンしたドゥオモ広場に面した入り口から入れる大きな本屋は、ガッレリア真ん中の入り口から入るCDショップとつながっていて皆を驚かせた。
セルフサービスのレストランやバールなどともくっついていて、この建物は大改装を行ったが、先週最後のカフェがオープンしてすべて完成したが、ココのそばを工事しているために、人出の多い時間は普通に歩けないほどの混雑だ。
それを抜けるまでにも似顔絵描きやちょっと怪しげな物売りが目に付き、通りにでるとそれがV.エマニュエレ大通り。
ブティックや雑貨店、バールなどが建ち並び、石畳の上にオープンカフェや大道芸の人たち、そして多くの若者達がひしめく。
最近の子供達の人気は、ローラースケートを履いて細長い風船を使ってパフォーマンスをしているおじさん。
男の子には剣、女の子には花。時間があれば衣装までのサービスぶりだ。
こんな風だから、出かけた帰りにも余裕があるとときどき歩いてみる。
季節が良くなって、どんどん楽しい発見ができますように。
(20/03/'99)
路上絵描きのモデルをする少女「HIROSHI、また寝ているのね。」
ダニエラが電話をしてくるときは、なぜだかボクがいつも寝ているとき。
「イタリアでは寝てばっかりいたらサカナも釣れないっていうんだぞ。」
ご丁寧に、恋人リッカルド(リキ)の補足付きだ。
そんなにいつも寝ているわけじゃないんだけど・・・。
絶対奴らはボクが寝ているのをどこかで見ているに違いない!
ドイツ人のダニエラは語学のクラスメートで会話の時によくペアを組んだ気の合う1人、リキは彼女との結婚が9月に決まっているイタリア人で、この2人とはとてもいいお付き合いができている。
最近ダニエラが日本食に興味を持ち始めて、さらに一緒に食事をする機会が増えた。
一応は日本食の作り方を教えるということで企画されるこのフェスタ(ホームパーティー)、本を見ながらだったらまあ調理はできるけど、それもないし一番の問題は材料。
少量だけど必要不可欠なもの、そういうのをそろえるのはやっぱり難しい。
まず、リクエストされたのが寿司。結構需要もあるようで、ミラノだと中華食材店で海苔や酢は手に入れることができる。異様に高くて賞味期限にも気を付けないといけないのだけれど。
寿司といってもさすがににぎりはできないから、海苔巻きに挑戦。これだったら教えてあげた後に自分たちでもできそうだし。
ココで結構ポイントになるのが鍋で白ご飯を炊くこと。ボクもイタリアに来るまではさすがにこれはやったことがなかったけれど、少ない量でも素早く、結構おいしく炊けるんだなこれが。
砂糖を結構たくさん入れることに驚きながら、自分でもおいしいと思える酢飯が完成。ふっふっふ。
巻く作業にはダニエラ達も参加、手をご飯でべとべとにしながら、どれを誰が巻いたかが一目でわかるくらいそれぞれ太さの違う個性的な海苔巻きができた。
途中、到着し始めたゲスト達へのご挨拶は手がこの状態で握手もできずに首を伸ばしてバーチョだけ。
みんな笑いながらこのおかしなコック達の行く末を見守っていた。
こうも不格好だとあまり売れ行きは良くないだろう、これまでの経験から正直そう思っていた。
しっ、しかし!!
おいしい、おいしいとあっという間に食べてしまうではないか!
探した大根は手に入れられなかったから、小さいジャガイモを入れたみそ汁も、照り焼きソースにつけておいてオーブンで焼いたターキーの焼き鳥も、気持ちがいいほど食べてくれた。
しかも、フォーク禁止令まで勝手に出して全員が箸をつかって!
20人以上来ることになったと聞いてどうなることかと心配したが、特別日本びいきなわけでないイタリア人達も大満足の様子を見て、また、まだまだ語彙に問題があるけれどそういう中に入っても特別困ることなく話ができるようになったことにも素直に喜べて気持ちのいい週末を過ごせたのでした。
そして、ダニエラはもう次を考え中だ。
何にしても寿司は気に入ったようではずせないメニュー。
「寿司がプリモ・ピアットだから、セコンドを考えてね。」
とのご指示。
うーん、どうしようかな。
(28/03/'99)
この頃からするともう10年以上、様子もすっかり変わって、当時のミラノではお寿司を食べた事のある人の方が少なかったのかもしれないが、今では偽物から庶民向け、高級店とそこら中に寿司レストランは乱立している。
中にはプラスチックかと思うようなご飯でも人気を博しているところもあるから不思議で、どこがおすすめかを聞かれたら、一応「日本のお寿司とは別物という認識」の上でのおすすめの経済的な店をあげるようにはしている。
今でも日本食を作ってよ、と言われて彼らのアタマにあるのは寿司。しかも「握り」だ。
そこをうまくかわして、いかにカレーやお好み焼きを味わってもらうかが、腕の見せ所の始まりである…。
2011年5月 ミラノ